岐阜県揖斐川町立揖斐小学校 横山 隆光 校長 にインタビュー

岐阜県揖斐川町立揖斐小学校 横山 隆光 校長

岐阜県揖斐川町立揖斐小学校
横山 隆光 校長

子どもと学ぶ ネットモラル

子どものスマートフォンの所有率は増加を続け、それに伴いトラブルや問題事案も多く報告されるようになりました。私達大人は、子ども達に何をどう教えたらよいのでしょうか。今回は、先進的に情報モラル教育に取り組まれている岐阜県揖斐川町立揖斐小学校の横山隆光校長にお話を伺いました。

学校で進める情報モラル教育

 学校では、道徳や特別活動をはじめとして、いろいろな授業の中で折に触れ、情報モラル教育を行っています。道徳では、学級での話し合いを通して、いろいろな考えがあることを知り、思いやりをもって接することの大切さや公徳心などを学びます。図工・美術では、絵画や写真を勉強するとき、著作者の作品への思いを考えて作品を大切に扱うこと、国語では、自分のレポートや発表資料に他の人の文章や資料を利用するときの「引用」の決まりや方法、保健体育では生活習慣やネット依存に関わることなどを学んでいます。特別活動では、情報モラルに関する動画教材を視聴して、問題点や対処法を話し合います。このようにして正しい知識を得て、危険を回避したり、安全に利用したりする力を身に付けています。

子どもと学ぶネットモラル

情報技術は日々進化し、情報機器を通じたサービスの内容は目まぐるしく変化しています。到底学校の指導だけでは追いつけないのが実情です。そこで求められるのは家庭や地域の協力です。

学校とPTAとが連携して情報モラルの研修をしたり、講演を企画したりする例もよく聞かれるようになってきました。国は「お子様が安全に安心してインターネットを利用するために保護者ができること」などの資料を作って、インターネットで公開しています。研修会に参加したり資料を見たりして、保護者の方も知恵を磨いて子どもに接する必要があります。もちろん心の面からの指導も欠かせません。子どもが小さいうちから、相手の気持ちを考えることの大切さを教えていただきたいと思います。その場の雰囲気や誘惑に負けて悪口を言ったり、相手の嫌がることをしたりしないよう自制することの大切さを、機会を捉えて繰り返し指導したいものです。情報モラル教育の根底となる考え方は、日常生活の中にあり、特別なことではありません。日々の生活の中で、育まれるのです。

また、いつでも親や近くの大人に相談できる雰囲気や環境をつくっておくことも大切です。家庭内のコミュニケーションを大切にして、できるだけ毎日、学校であったことや興味関心のあることを話し合う時間を確保していただきたいと思います。信頼できる環境があれば、トラブルに出遭った時も大きな問題になる前に対処できるからです。

スマートフォンや携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤーなど、子ども達が使用する様々な機器がインターネットにつながるようになった今、一番求められているのは、家庭の力だということが分かります。

家庭も地域も子どもと一緒に

期待される取り組みの一つとして、児童会や生徒会が自分たちでインターネットを使う時のルールや約束を決めた学校があります。簡単に紹介します。

初めに、児童会や生徒会が中心となって、自分達と情報機器との関わり合いについて実態調査を行いました。集計を進めていくうちに、子ども達は「インターネットの利用時間を減らしたいと思っているのは自分だけではなかった」「SNSに時間を使うのがもったいないと思っている人は予想以上に多かった」などと気づき、みんなで話し合って解決策を考えようと動き始めました。その結果、子ども達が自分たちのために考えたインターネットを使うときのルールや約束が、例えば「個人情報、うわさ、誹謗中傷を書かない」「フィルタリングをかける」「利用時間決める」などと作られたのです。大人が決めて子どもに押し付けるルールや約束ではないだけに、効果は持続します。

さらに、これらの取り組みを学校内にとどめるのではなく、PTAや学区へと広めていきました。子ども達自身でルールや約束を作ったとしてもネット依存傾向の強い子どもは、こうした約束を守れないことがあります。そんなときは、家庭や地域の協力が必要となります。そこで、生徒会が学校でのインターネットへの取り組みを説明してPTAへ協力をお願いしました。それを受けてPTAは、取り組みを支援する申し合わせ事項をつくったのです。

いずれも、子どもの自己決定や活動をPTAや地域が支えるという構図です。子どもの自治力、自浄力が高まり、家庭や地域の理解も深まります。このようにして子どもの取り組みを家庭や地域で支えることが、子ども達を守ることにつながるのです。

望ましい情報社会の実現に向け、家庭も地域も子どもと一緒に活動することへの期待が高まります