富山大学人間発達科学部 高橋純 准教授 にインタビュー

富山大学人間発達科学部 高橋純 准教授

富山大学人間発達科学部
高橋純 准教授

みんなで学ぼう!ネットモラル

学校での情報モラル教育が浸透してきた今、「家庭での情報モラル教育」の重要性が高まっています。なぜ家庭での情報モラル教育が重要なのでしょうか。警察庁が発表したデータや文科省が行っている「全国学力・学習状況調査」のデータをもとに富山大学人間発達科学部の高橋純・准教授が語ってくださいました。

家庭で求められる情報モラル教育

警察庁が発表した興味深い調査結果があります。「コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査結果(平成24年下半期)」によると、被害に遭った児童の約55%が、携帯電話やインターネットの利用に関して、保護者から何の注意も受けていませんでした。注意は受けていたという児童でも、一般的な注意にとどまっていたのが約27%。両者を合わせると、被害者となった児童の4分の3以上が、保護者からちゃんとした指導を受けていなかったのです。家庭での情報モラル教育の不備が、子どもの危険に直結することがよく分かります。

ケータイやネットの利用状況と「学力」の関係

文部科学省が行っている「全国学力・学習状況調査」でも、興味深いデータが出ています。これは全国の小6と中3の学力を一斉に調査するテストで、マスコミからもよく報じられています。この調査では、学力と生活習慣との関連性も分析していることをご存知でしょうか?

たとえば、「携帯電話で通話やメールをしていますか」という質問では、「携帯電話を持っていない」と答えた生徒の点数が全教科ともに最も高くなりました。「ほぼ毎日している」と答えた生徒と比べると、4ポイント前後の差がついたのです。また「携帯電話の使い方について、家の人と約束したことを守っていますか?」という質問では、「守っていない、または約束はない」と答えた生徒よりも、「きちんと守っている」と答えた生徒の方が全教科で点数が高くなりました。

「依存」を防ぐためのルール作り

これら2つのデータから、子どもたちを危険から守るとともに、学力の低下を防ぐには、学校だけでなく家庭の役割が重要であることが分ります。学校と家庭が車の両輪となって、子どもたちに情報モラルを育んでいく必要があるのです。

では、家庭でどのような指導を行えばいいのでしょうか。最も大切なことは「依存させない」ことです。ケータイやネットを長時間利用すればするほど悪意を持っている人に出遭う機会は増え、危険性も高まります。また家にいるときも友達に気を使ってチャットやメールのやりとりに追われてしまうと、自分の時間や家庭でのコミュニケーションも失われてしまいます。精神的にも参ってしまうでしょう。

「依存」こそが、多くの問題の根源。以前問題になった「メール」も、今問題になっている「無料通話アプリ」も、依存するから問題が起きるのです。逆に言えば、依存せずに適切に携帯電話やネットを利用する姿勢さえあれば、今後どんな新しいサービスやアプリが出てきたとしても、問題は起こりにくいと思います。
「依存」を防ぐには、使用する目的を家族で話し合い、使用できる時間や時間帯を決める、ケータイの充電はリビングに限る、など家庭でのルールを子どもと一緒に作ることが大切です。またルールは成長に合わせて変えてあげることも重要です。

 さらに、フィルタリングやそれぞれの機器の機能制限を設定することで、有害サイトへのアクセスや使い過ぎなど、ある程度防止することができます。

保護者も正しい知識を

 情報モラルの欠如が原因となって起きる問題は、マスコミが報じるような大きな事件に巻き込まれることだけではありません。もっと身近な危険がたくさん潜んでいます。たとえば、歩きスマホをしていて交通事故にあってしまったり、メールやSNSで友達との人間関係が壊れてしまったりすることがあり、誰もがトラブルに遭う危険性を持っています。「うちの子に限っては大丈夫。マスコミが報じているような大きな事件には巻き込まれるはずがない」と、決めつけて油断しないでください。

学校と家庭が車の両輪となって子どもに情報モラル教育を行いましょう。そのためには、保護者が情報機器や情報社会の正しい知識を豊富に持つことが大事です。そうすることで、子どもの情報モラルも向上し、子どもを健やかに育むことに繋がるのです。